二十四節気 立秋

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妊娠中の冷え、どこまで気にする?——「安産の敵」と言われる理由と、今日からの温め方

この記事でわかること
  • 妊娠中に「冷えは安産の敵」と言われる理由——体で実際に起きていること
  • 冷えとお産の関係について、研究で分かってきたこと
  • 今日からできる、無理のない温め方
  • 冷えてしまった日に、自分を責めなくていい理由

「妊娠中は体を冷やさない方がいい」「冷えは安産の敵」——そんな言葉を、一度は聞いたことがあるかもしれません。もともと冷え性の方は、「このまま出産を迎えて大丈夫だろうか」と不安になることもあると思います。

結論から言うと、妊娠中の冷えは、温めてあげる価値のあるサインです。昔からの言い伝えというだけでなく、近年は冷え症とお産の経過との関連を示す研究も報告されています。この記事では、「冷え」と妊娠中の体の関係を整理して、今日からできる温め方と、「冷えてしまった日に自分を責めなくていい理由」を一緒に考えます。

妊娠中に「冷え」が気になりやすい理由

妊娠中は、体の中でいくつかの変化が同時に起きています。

  • 増えた血液は、赤ちゃん優先に使われる——妊娠中は、体をめぐる血液の量が妊娠32週ごろをピークに大きく増えますが、その血液は赤ちゃんのいる子宮に優先的に回ります。また、血液の量が増えても赤血球が同じだけ増えるわけではないため、妊娠中期から後期にかけては貧血気味になりやすくなります。手足の先まで巡りが後回しになり、冷えを感じやすくなることがあります
  • 大きくなった子宮が血管を圧迫する——お腹が大きくなるにつれて、子宮が骨盤の中の静脈を押し、脚から心臓へ戻る血の流れがゆっくりになります。脚のむくみや重だるさは、これが一因です

一方で、妊娠中はホルモンの影響で体温がやや高めになり、むしろ「暑がり」になる方も多くいます。冷えを強く感じる方も、暑くてたまらない方もいる——感じ方の個人差が大きいのが妊娠中の体、と思ってもらうのがいちばん実際に近いところです。いずれも体の異常ではなく、赤ちゃんを育てるための変化の一環です。

「冷えは安産の敵」と言われる理由

東洋医学では、昔から「冷えは巡りを滞らせる」と考えられてきました。体が冷えると、お産に向けての体力や巡りにも影響するのではないか、という発想から、「冷えないように」という養生の知恵が積み重ねられてきました。

そして近年、この昔からの知恵に、研究が追いついてきました。産後の女性2810名を対象にした日本の助産学の研究では、妊娠後半に冷え症だった方は、そうでない方に比べて、お産のときにこうした違いがみられたと報告されています。

  • 早産——約3.4倍
  • 遷延分娩(お産が長引くこと)——約2.4倍
  • 微弱陣痛(陣痛が弱く、お産が進みにくいこと)——約2倍
  • 前期破水(陣痛が始まる前に破水すること)——約1.7倍

体重や喫煙など、他の要因の影響を統計的に取り除いたうえでの数字です。そしてこの研究で言う冷え症は、検査の数値ではなく「妊娠後半に、手足が冷えていると感じたかどうか」で判断されています。つまり、自分の冷えに気づけるかどうかが、そのまま分かれ目になっているということ。助産師として長く見てきて、わたしがいつも思うのもここです。冷えている方ほど、自分では気づいていないことがあります。

産後のおっぱいのトラブルにも冷えが絡んでいると感じている助産師は少なくありません。わたしも、その一人です。冷えは、軽く扱わないでほしいことのひとつです。

今日からできる、無理のない温め方

  • 腹巻き・レッグウォーマー・首のスカーフ——お腹と、首・手首・足首の「3つの首」を覆うのが基本です。わたし自身、初めて腹巻きをつけたとき、びっくりするくらい温かく感じました。つけていなかった頃は、それが普通だと思っていたんです。それくらい、自分の冷えには気づきにくいもの。「冷えている自覚はない」という方こそ、一度試してみる価値があります
  • 足湯——洗面器やバケツに、すねの真ん中くらいまで(できれば膝まで)浸かる量のお湯を張って、足を温めます。湯船より手軽で、のぼせにくく、脚のむくみが気になる日にも向いています。助産師として、妊婦さんによくおすすめしてきた方法です
  • 湯船に浸かる——シャワーだけで済ませず、無理のない範囲で湯船に浸かる時間を作ると、体の巡りを感じやすくなります。お湯は熱くせず、「気持ちいい」と感じるぬるめで十分。のぼせる前に上がってください。みぞおちまでの半身浴でも大丈夫です
  • 床を素足で歩かない——フローリングの床は、思っているより冷たいものです。スリッパと靴下で、足の裏を床の冷たさから守ってあげてください。脚で冷えた血液は、骨盤の中——子宮のすぐそばを通って心臓へ戻っていきます。だから助産師は、足元の冷えを意外と大事に見ています
  • 散歩をする——妊娠経過に問題がなければ、担当医に相談のうえ、散歩やマタニティヨガなどを取り入れてみてください。わたし自身、歩いていると冷えていた足に血が巡っていくのが、はっきり分かりました。妊娠中に体を動かしていた方は、お産の時間が短い傾向があるという報告もあります。わたしも医師に確認したうえでよく歩いていて、お産は短めでした——歩いたおかげなのかは、正直わかりません。お産の長さは体力だけで決まるものではないので、長くかかった方が何かを欠いていたということでもありません。それでも、冷え対策と体力づくりをいっぺんにできるのが、散歩のいいところだと思っています

そこまで気にしなくていいこと

  • 一日一日を責めること、「体質だからもう無理」と悲観すること——冷えとの付き合いは、毎日の小さな積み重ねです。1日冷えたからといって何かが決まるわけではないし、冷え症は生まれつきの決まりごとでもありません。心配しすぎて体を縮こまらせるより、今日ひとつ温める工夫を足すほうが、ずっと体の味方になります
  • すでに早産やお産のトラブルを経験した方が、「あのとき冷やしたからだ」と振り返って自分を責めること——お産のことには、いくつもの要因が重なります。冷えはそのうちの一つで、しかもすべてを決めるものではありません。ここに書いた数字は、これからの妊娠期を過ごす方が「温めてみようかな」と思うための材料です。過ぎたことの理由探しのためではありません

こんなときは、養生より先に

脚の冷えやむくみは多くの場合心配いりません。ただ、めったにあるものではありませんが、片脚だけが急に強く腫れる・赤くなる・痛みを伴うときは、血栓など別の原因が隠れていることがあります。気になる腫れ方をしたときは、養生の話より先に、産院に相談してください。

そのほか、妊娠中に「これは相談した方がいい?」と迷う症状については、妊娠中の安全基準ページにまとめています。

この記事のひとこと

妊娠中の体が冷えを感じやすいのには、理由があります。完璧に温める必要はありません。腹巻きひとつ、足湯ひとつからで大丈夫。今日できるひとつを、足してみてください。