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プレコンセプションケアと養生——妊娠前の1年でできる体の準備

この記事でわかること
  • プレコンセプションケアとは何か、公的にどんな準備が推奨されているか
  • 「公的な準備」と「養生の視点」、それぞれ何をするものなのか
  • 今の暮らしで、無理なく始められる整え方
  • 全部を一気にやらなくていい理由

「いつか妊娠したい」と思ったとき、何から始めればいいのか分からなくなることはありませんか。基礎体温をつけた方がいいのか、食事を変えた方がいいのか、病院に行くべきなのか——情報が多すぎて、かえって身動きが取れなくなることもあると思います。

この記事では、妊娠する・しないにかかわらず、今の体を整えておくと安心な準備を、公的に推奨されている内容と、養生の視点の両方から整理します。全部を今日から始める必要はありません。「こんなものがあるんだ」と知っておくだけでも、次の一歩が選びやすくなります。

プレコンセプションケアとは

プレコンセプションケア(preconception care)とは、「妊娠前からの体づくり」という意味の言葉です。妊娠を考え始めた時期からではなく、妊娠するかどうかまだ分からない段階から、自分の体と向き合っておくという考え方が土台にあります。

「妊娠を目指す人だけのもの」ではなく、いつか産みたいと思うかもしれない人が、今の体の状態を知っておく機会、と捉えるとイメージしやすいかもしれません。

公的に推奨されている準備

まず、医学的な根拠があって推奨されている項目を紹介します。数字が出てくる部分は、公的な資料に基づくものです。

  • 葉酸をとる——妊娠初期の赤ちゃんの神経管の発達に関わる栄養素で、妊娠を考え始めたら1日400μgをとることが推奨されています。葉酸は体に溜めておける栄養素ではないため、「妊娠する少し前に1回とる」のではなく、とり続けることが大切です。体に十分行き渡るまでには2ヶ月ほどかかると言われているので、妊娠に気づいてから慌てて始めても間に合わないことが多く、「妊娠するかもしれない」段階からの摂取が案内されています
  • たばこ・受動喫煙を避ける——本人の喫煙はもちろん、パートナーの喫煙による受動喫煙も避けることが推奨されています
  • お酒を控える——妊娠が分かってからではなく、妊娠を考え始めた時期から控えるという案内がされています
  • 適正体重に近づける——やせすぎ・太りすぎのどちらも、妊娠・出産に影響しうることが知られています。「今すぐ標準体重に」ではなく、無理のない範囲で近づけていく、という考え方でよいと思います
  • 風疹の抗体検査を受ける——風疹の抗体が少ないまま妊娠すると、赤ちゃんに影響が出ることがあります。抗体検査は自治体や職場の健診で受けられることが多く、抗体が少ない場合はワクチン接種が案内されます。風疹ワクチンは妊娠中には接種できず、接種後も一定期間の避妊が必要なので、「妊娠してから」では間に合いません。妊娠を考え始めたら、なるべく早めに検査・接種のタイミングを済ませておくと安心です
  • 持病・服薬をかかりつけに相談しておく——持病がある方、薬を飲んでいる方は、妊娠を考え始めた段階で一度、主治医に相談しておくと安心です。「妊娠するなら薬をやめた方がいいのでは」と自己判断で服薬を中断してしまう方がいますが、これはかえって持病を悪化させてしまうことがあります。たとえ妊娠中であっても、自己判断で薬をやめることには注意が必要です。薬の継続・変更が必要かどうかは、必ず主治医と相談したうえで決めてください
  • 歯科検診を受けておく——これは本来、妊娠と関係なく定期的に受けることが推奨されているものです。歯周病があると早産や低出生体重のリスクが高まる可能性があるとも言われているため、妊娠を考え始めた時期に合わせて、気になる歯があれば早めに診てもらうという案内もあります

これらは「今すぐ妊娠する予定」でなくても、知っておいて損はない情報です。パートナーがいる方は、二人で確認してみるのもよいと思います。

養生の視点——公的な準備と、少し違う角度から

ここまでの項目は、いわば「医学的に推奨されている土台」です。ここからは、東洋医学の養生の考え方から見た、体の整え方を紹介します。こちらは効果を約束するものではなく、昔から大切にされてきた暮らしの知恵として読んでください。

  • 体を冷やしすぎない——東洋医学では、体の巡りは温かさと深く関わると考えられてきました。冷房の効いた部屋で靴下を1枚足す、湯船に浸かる時間を作るなど、できる範囲で「冷やさない」を意識してみる、というくらいで十分です
  • 食事は、足し算より整え方から——特別な食材を探すより、まず「温かいもの」「よく噛めるもの」を、いつもの食卓に増やしてみる。それだけでも、整える一歩になります
  • 睡眠のリズムを大きく崩さない——忙しい時期ほど後回しになりがちですが、寝る時間・起きる時間が大きくばらつかないようにするだけでも、体の巡りは整いやすくなると考えられています。東洋医学では22時、遅くとも23時から3時の間にしっかり眠ることを大切にする考え方があり、私自身、漢方の主治医からもこの時間帯の睡眠を勧められたことがあります。毎日きっちりでなくても、「眠れる日はこの時間帯を大事にする」くらいの意識でよいと思います
  • 月経周期を、体からのお便りとして見る——周期の乱れや経血の状態は、体調のサインとして参考になります。基礎体温をつけていなくても、「今回はいつもと違うな」と気づくだけで十分な観察になります

全部を一気にやらなくていい

ここまで読んで、「こんなにあるのか」と感じた方もいるかもしれません。ですが、これは今日全部を始めるためのリストではありません。

まずは1つ、気になったものから。葉酸のサプリを買ってみる、風疹の抗体検査の予約を調べてみる、湯船に浸かる回数を増やしてみる——どれか1つでも、体を整える準備になります。妊娠する・しないにかかわらず、今の体と向き合う時間そのものに意味があると思います。

この記事のひとこと

プレコンセプションケアは、「早く妊娠するための正解探し」ではなく、「今の自分の体を知っておく」ための時間です。公的な準備も、養生の暮らしの工夫も、どちらも「これをしないと妊娠できない」というものではありません。できるところから、自分のペースで整えていってもらえたらと思います。